【真田丸】大河で見る石田三成 「佞臣」から「悲劇の人」へ
2016/08/07 05:30
石田三成は、長らく正当な評価がされてこなかった人物だ。
彼は、江戸時代には「家を潰した佞臣」として扱われた。明治に入り豊臣秀吉が再評価された時も、三成の名誉回復はあまり行われなかった。「敗者は悪者」というイメージから、日本人はなかなか逃れることができなかったのだ。
だが、現代に入り「三成の描き方」にようやく多様性が出てきた。こうしたことは、NHK大河ドラマの役作りにもはっきり現れる。
■悩める管理職・三成
竹中直人主演の『秀吉』の石田三成は、真田広之が演じた。じつはこの三成が、最も「旧来イメージ」に近い。
すなわち「善悪の区別がつかなくなった太閤の腰巾着」だ。頭はいいが器は大きくなく、秀吉の無茶な命令に何でも従ってしまう男。真田広之は、そうした「昔からの三成」を見事に演じ切った。
だが、そうした三成の描き方はすっかり古いものになった。先述の通り、彼に対する歴史的再評価が進んだからだ。
たとえば『江〜姫たちの戦国〜』では、荻原聖人が三成を演じた。「太閤の腰巾着」という点では真田広之と同じだが、ここでの三成は無謀な命令を言い渡されるたびに苦悩の表情を浮かべる「悲劇の中間管理職」だった。
秀吉が明国皇帝からの金印下賜に激怒し、再びの唐入りを言い渡した時も三成は従ってしまう。それを徳川家康に諭されても、後悔にじむ顔で「御免!」と返し背中を向けることしかできない。その姿は、現代のサラリーマンに通じるところがあった。
■じつは高潔な殿様だった?
また、『功名が辻』の三成は恐らく戦国ドラマ史上最も「上品な三成」である。演じたのは、中村橋之助である。
物腰柔らかく、常に低頭。そして領民を思いやる態度。なぜこのような高潔な人物が関ヶ原で敗れ去ったのかと、疑問に思ってしまうほどだ。
そしてこのあたりから、「三成=悲運の人」というイメージが定着した感じがある。史実の三成も決して「器の小さな佞臣」などではなく、農民の反発が強かった太閤検地を難なく実施している。佐々成政は太閤検地を行おうとして一揆を誘発させてしまい、その責任を負って切腹している。
三成が「武力以外の何か」を持っていた証拠だ。
■山本耕史の「三成」の魅力
今現在放映されている『真田丸』の三成も話題を呼んでいる。演じているのは山本耕史。
この三成はいかにも官僚タイプといった性格で、物事をはっきりと言うため冷酷にも見える。だが部下である真田信繁(幸村)のことを気遣っていて、彼が窮地に陥った時は助け舟を出してくれる。無表情だが、じつは優しい上司という位置付けだ。
歴史は敗者に対して厳しい。敗れ去った者は、いつも悪役にされてしまう。だからこそ、「敗者の再評価」が現代では求められている。
三成以外にも、こうした歴史人物はまだまだ存在するはずだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)
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