売れるまで帰れない?タイに派遣された「よしもと芸人」の今
2016/04/04 10:30
「アジア住みます芸人」の存在をご存じだろうか? 彼らは、アジアでのエンタメ事業展開の基盤を構築するため、日本各地のエンタメコンテンツを広める「伝道師」として派遣された芸人たちのことだ。
2015年、吉本興業主導のプロジェクトで9組13名の芸人たちが台湾、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムへ飛び立ったのである。
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■現実とのギャップに「話が違う」
タイに派遣されたのは、こちらの3人。左から、「あっぱれコイズミ」「はなずみ」「ぼんちきよし」だ。
「売れるまで帰るな」という言葉と共に、片道航空券と所持金5万円を握りしめてタイにやってきた彼ら。
だが1年経たずに、初期メンバーの1人であるベン山形は「海外が苦手だった」という理由から帰国するという前代未聞の事態に(現在は新聞配達の仕事をしているそうだ)。
この話からも相当な過酷さがうかがえるが、それでもなぜ「住みます芸人」になろうと思ったのだろう? しらべぇ取材班は、現メンバーの3人に直撃取材してみた。
■なぜタイにやって来たのか?
同ブロジェクトはメンバー全員が自ら志願したそうだが、最終的に行く国はお任せだったという。だが、口を揃えて出てきたのは「話が違っていた」という言葉だ。
家賃が出る、最低限の生活は確保できるという期待と、現実とのギャップ。生活ぶりは、半年以内で全員が約10キロ痩せたという話で、聞かずもがなである。
彼らは所属元である吉本興行を「健全なるブラック企業」と呼んでいた。同事務所に所属する芸人は6000人を超え、そのうち「タイ住みます芸人」はわずか3人。
オーディションを勝ち抜いた3人にとっては、この機会はチャンスということだったのだろう。
■タイでの活動状況は…
彼らはそれぞれがピン芸人ではあるが、日本をわかりやすくアピールするため「忍者隊」を結成。
さらに「JAPAN EXPO」や、タイ国進出日本企業のイベントにも出演し、言葉の壁を乗り越え知名度を上げるべく、奮闘している。日本大使館のイベントとの提携も決まったそうだ。
さらにはタイ全土に流れるCMにも出演し、その活動の幅を広げている。
■いつまで続ける?
吉本興業からは「売れたら日本へ帰す」と言われたらしいが、彼らには「売れたならタイに残ったほうがいいのではないか」という疑問が出てきているようだ。
だが、派遣された国の人を笑わせる使命を考えると、終わりがないかもしれないと不安を抱える3人。全員が口をそろえて「長くても2年程で売れて帰りたい」と本音を語っていた。
そうした葛藤を抱えながらも、「受けた仕事は何でもします!」と熱く語る姿には芸人魂を感じたのである。「住みます芸人」の今後に期待したい。
(取材・文/しらべぇ海外支部・hiroko)
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