注目のイスラム市場 世界のファッションシーンを変える「ヒジャブ」
2016/03/26 05:30
「ヒジャブ」はイスラム教徒の女性が、頭髪を隠すために被る布である。これは戒律的な問題で、個人や家庭、地域によって着用するかしないかの差が存在する。
だが近年、このヒジャブが戒律を越えた先にいる。ひとつのファッションアイテムとして注目されているのだ。従来の常識を凌駕するような華やかなヒジャブが、世界中で見られるようになっている。
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■ヒジャブは「自由の象徴」
かつて、とある女性人権活動家が「ヒジャブは抑圧の象徴」と発言した。イスラム教とは縁薄い一般市民も、「抑圧の象徴」まではいかなくとも「戒律があるから被らざるを得ない」という見方をヒジャブに向けていた。
しかし、そうした見方はもはや古いものに。現代のヒジャブは「抑圧の象徴」どころか、まさに「自由の象徴」として世界のファッションシーンを変革しようとしている。
とくにインドネシアは、最先端ヒジャブの一大発信地である。この国の市民は戒律に対してわりと穏健的な姿勢という背景もあるが、何よりも芸術分野に関しては特異な才能を発揮する国民性が大きく関わっている。
しかも、インドネシアは古来からの繊維大国である。ファッション産業が栄える基礎は充分にできている。
■複数枚重ねが流行
インドネシア女性の間では、柄の異なる複数枚の布を重ねたヒジャブが流行っている。
数年前までは帽子と同じひさしが付いた、単色のヒジャブが主流だった。今でもスポーツを行なう時などはそうした機能的なものが好まれるが、ショッピングに行くとなると事情は違ってくる。
2枚重ね、3枚重ねの色鮮やかなヒジャブを被り、ジャカルタのショッピングモールに出かける。インドネシア市民はお洒落にはうるさい。室内着のまま家を出てショッピングモールへ、などということは絶対にしないのだ。
■日系企業も注目
ところで、我が国日本もインドネシアに劣らぬ繊維大国。生産が決して容易ではない綿や絹の安定供給を成し遂げ、さまざまな種類の織物や染物を開発した我が国の農業技術は世界トップレベルと言っても過言ではない。
そんな日本の伝統繊維産業が、近年イスラムファッション市場に進出しようと努力を重ねている。それに合わせて日本人デザイナーや日系アパレルメーカーも、新しいヒジャブの開発に名乗りを上げた。
日本人は宗教に疎いと言われ、実際に数年前まではイスラム市場に対してどの企業も及び腰だった。だが、状況は完全に様変わりした。今やあらゆる業界の企業が、イスラム市場の門を叩いている。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)
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