「AV女優強制出演」問題に元・人気女優の川奈まり子が提言

「AV女優強制出演問題」が話題となっていますが、これに対する元AV女優で作家の川奈まり子さん(しらべぇコラムニスト)からの提言をご紹介します。

2016/03/08 17:00

川奈まり子

NPO法人「ヒューマンライツ・ナウ」が発表した「アダルトビデオ強制出演」についての報告書が話題を呼んでいる。

これに対して、元・人気AV女優で作家の川奈まり子氏がFacebookに投稿した文章もニュースサイトに取り上げられ、注目を集めた。

川奈氏は夫でAV監督の溜池ゴロー氏とともに、しらべぇコラムニスト。そこで、しらべぇ編集部は川奈氏に許諾をいただき、今回の一件についての川奈氏のFacebookコメントを全文掲載でご紹介したい。


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■AV業界の実情は「報告書」と乖離

原稿修正作業中でしたが、「大丈夫?」と心配してくださる方が何人かいらっしゃったので、大丈夫だということと、ニュースの記事にあるのとは少し違って、伊藤和子弁護士と私は至極なごやかにコミュニケーションを取っていることを、このページに注目してくださっている皆さんにお伝えに参りました。


事実はどのようだったかということを以下にご報告します。


一昨日から昨日にかけて、伊藤弁護士が私の投稿にコメントを下さり、有意義なやりとりをさせていただきました。


また、伊藤弁護士のページにあった塩村議員のスレッドに私が誤ってコメントを載せてしまったことがきっかけで、塩村議員ともコミュニケーションが取れました。


私は、まず、AV業界の実情が報告書から受けるイメージとは乖離している旨を伊藤弁護士に伝えました。


伊藤弁護士からは、日頃からAV出演を違法行為と規定してAV撲滅を志しているPAPSと今回のHRNのアクションは意図を異にするもので、伊藤弁護士にはAV業界を潰すつもりは無く、ただ、雇用側の問題点を炙り出し、AV出演の雇用者の被害を無くすことだというご回答をいただきました(ただしこれはHRNの公式見解ではなく伊藤弁護士の個人的なお考えということですが)。


また、塩村議員からは私には良識があるとの御言葉を賜り、同じく良識がある伊藤弁護士と有意義なやりとりをすることで良い結果になるよう期待するというようなコメントを(塩村議員のスレッドで)戴きました。


――というわけで、ニュースの記事にあるほど激しく対立しておりません。反発は覚えましたが「猛」の字は余分です。


そもそも私は、AV出演を強要されるような事態は許しがたく、出演者の雇用側に問題があれば直ちに糺されなければならないと考えているのです。


ですから、HRNの報告書については、これまでも是々非々の意見を述べさせていただいてきたつもりです。伊藤弁護士に対しても、事実誤認や印象操作の疑いがある不十分な表現など、件の報告書にある問題点を指摘したに過ぎません。


そして伊藤弁護士らは、冷静にそれを受け留めて返信してくださいました。大人同士の礼儀に反しないコミュケーションの中で、今回、伊藤弁護士が、AV出演を違法行為と規定してAV撲滅を志しているPAPSとHRNのアクションは意図を異にしており、伊藤弁護士自身はAV出演を非合法だとは考えていないと表明したことには、大きな意味があると思います。

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■AV関係者への8つの提言

ここから先は、私なりの今後の予想とAV関係者への提言です。


伊藤氏らのアクションの効果次第では、今後、たとえばAV作品の倫理審査基準に、作品内容に関する規制が加わる可能性はあるかもしれません(が今は何とも言えません)。


またプロダクション業務、ことに出演者との契約や雇用について何らかの規制がかかることになることも考えられます。私は、それらは程度や範囲によりますが、基本、むしろ歓迎したいと考えております。


HRNは国連NGOなので、秋葉原では児童買春が横行しているとした前回のHRNの国連報告と似たような経緯は、今回もあると思います。が、現状と乖離している部分、事実誤認の部分が報告書に散見できますので、秋葉原のときと同じように、彼らは失敗する可能性もあります。


AVメーカー、プロダクション、制作会社(とくにAV監督)は、出演者の意思を尊重し、怪我や感染症の心配がないよう、今まで以上に注意する必要があります――が、これは当然のことです。


「あたりまえのこと」が皆きちんと出来ているならば、必要以上に恐れることもないでしょう。「あたりまえのこと」というのは、こういうことです。


・ダクションはAV女優に労働に見合ったギャラをちゃんと支払うように!


・監督やスタッフは、出演者に怪我をさせないこと!


・メーカーは、事前に撮影の内容がAV女優(本人)に伝わるよう配慮する!


・路上スカウトは禁止! 甘言で誘うのも絶対ダメ!


・AV女優は、難しくてもちゃんと契約書を読みなさい! なんか印刷された紙を渡されたら、まず読む! うかつにサインしない!


・インターネットが普及したこの時代、自分のやったことはすべて、いつか必ず、家族や友人どころか、世界中にバレるにきまってるでしょ! 絶対バレないと言うヤツは嘘つきか馬鹿! だから信用しないこと!


・それと、納税・貯蓄・整形以外の自己投資! やるなら今! 甘い夢を見ない!


・AV出演は合法! 自分を違法な売春婦と同一視するんじゃない!


ただの助言のつもりが、お説教じみてしまいました。うん。これはキッパリと上から目線のお説教ですね(笑)でも、いちばん大事なことしか言っておりません。


えばりたいわけじゃないんです。現役のAV女優さんに言いたいことが多くなりましたが、それは私が元AV女優だからです。


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■「レイシスト」は真実の前には弱い

……結局ねぇ、「その後」の人生の方が長いんですよ。どうやって「その後」を生き抜いていくか? AV女優の皆さんはこのことを真剣に考えるべきです。


真剣に考えると、うっかり絶望しそうになるかもしれません。でも、どうか決して絶望しないでください。


私は「その後」を生きてます。私を見て。私は健康で元気です。性病どころか水虫にすら罹ったことがありません。結婚をし、売れてませんがプロの作家として収入を得て、子育てをし、子供は学校で苛められてません。


私と夫が誰にも何も隠さず、堂々と暮らしているというのに、です。レイシストは真実の前には弱いものです。やれば出来るんだから、AV女優の皆さんは希望を持ってください。


今の自分だけではなく、「その後」の自分も大切にすること。それだけで、道は必ずひらけます。


――正しいことをしているならば、みんな大丈夫。現在AVメーカー各社は倫理審査団体を通じて警察庁や経産省とパイプを持っていますし、72件の被害事例があったとされる3年もあれば大手3社だけで18,000タイトル以上の商品をリリースしている巨大な集団です。


大手メーカーはグループ企業化する過程で政治勢力含め社会の様々な階層にコネクションを得てきていることでしょう。


AV業界は、AVが合法であるこの国で、決して弱い存在ではありません。暴対法やスカウト禁止条例の施行を経た結果、AV業界は大きく変わりました。


今はメーカーやプロダクションは企業で、そこで働く社員はいわゆるサラリーマンやOLです。業務内容も多岐にわたり、制作以外に営業職も技術職もいますし、大手は大卒予定者を新卒採用しており、職員の高学歴化が進んでいます。


AV出演者は男女とも大半は個人事業主ですが、本人や世間がどう思っているか如何によらず、職業は俳優やタレントと同じく、合法的な出演業にカテゴライズされています。


確定申告の際には職業は出演業、芸名を屋号として届け出るのが通常です。また、AV女優にはシングルマザーも多く、貧困家庭のサバイバーも少なからずいることを私は知っています。


業界人は、末端のフリーの技術職の人々まで含めると、何万人になるか見当もつきません。十万は優に超えるのではないでしょうか。あるいはもっと。そして彼らの多くに家庭があります。


これが今のAV業界の実像です。一般の方の中には、意外に思い、容易には受け容れがたく感じる人もいらっしゃると思います。


残念なことに、世間のAV業界のイメージは、昭和時代のAV黎明期に暴力団がハバをきかせていた頃のまま足踏みしているようです。


HRNの報告書はその古いイメージを利用している。んなふうに、私には思えました。


幸い、AVを撲滅する――つまり、AV業界の人々を一気に非合法勢力側に追いやり、貧困化させ、犯罪被害・加害を増やし、あるいは福祉の対象とするまでの企図は、HRNにはないようです。


あるとしたら、AV女優を違法な売春婦と同一視しているPAPSです。件の報告書を読めばわかりますが、HRNはPAPSという団体と連携しています。


PAPSは性の商品化に反対する人権擁護団体で、その主張は、現代美術家・会田誠氏の芸術作品の展示中止や、AV監督・バクシーシ山下氏の著作の出版差し止めを求めるなど、極端に過激なものです(と私は感じました)。


PAPSによる差別の助長を防ぐには、できるだけ多くの人に現在のAV業界の状況を正しく知っていただくのがいちばんだと考えます。


繰り返しますが、レイシストは真実の前には弱いものですから。


私の投稿のシェアがFBのみならずツイッターでも思想の左右によらずに拡散し、支持を得ていることに感謝している次第です。

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(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部

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