独特の判定法、選手達の切実な背景…日本人が知らぬ奥深すぎるムエタイの世界
2015/03/20 20:00
立ち技競技世界最強と呼ばれる「ムエタイ」は、その名の通りタイの国技。“ムエ”は格闘技という意味で、“タイ”はそのまんまです。
タイ式キックボクシングとも呼ばれ、最近では本国タイでも「ダイエットに効く」として女性たちに大人気。そこで今回、ムエタイに魅せられ、ご主人を日本に残してまで単独で本場タイにて修業を重ねてきた4年目のアマチュアムエタイ選手・吉嶺加奈子さんに話を聞いてみました。
― まず、ダイエットはどこに効きますか?
「ずばり、ウエストです! ムエタイの攻撃の要であるパンチと蹴りの練習は、ゆっくり動かしても相当ウエスト周りの肉が動くことが実感できます」
― 全身運動なんですね。
「“ワイクルー”と呼ばれる、試合前の儀式的ダンスがあります。師(クルー)に合掌する(ワイ)、つまり“師に礼を示す”というニュアンスの意味をもち、これも腕・背中・ウエスト・ヒップ・脚と全身を使うので、かなりのダイエット効果をもたらすとされています」
― ストレス発散にもなりますか?
「言わずもがなですね。練習の際は、パンチを受けたり蹴られたりすることはなく、ただひたすらにパンチを繰り出し蹴りを入れます。心身ともに、ストレス発散、そしてデトックス効果も抜群だと言います」
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■選手にとっては命がけ…無料のムエタイイベント
さて、バンコクでムエタイが観られる場所といえば、スタジアムです。観戦料は、500~2000バーツ(席により変わり、約2000円~約7000円)。事前にチケットを購入しなければならないので、旅行者には少し敷居が高いかもしれません…。
しかし! バンコクの中心・サイアムにある大型ショッピングセンターMBKの目の前の広場では、毎週水曜日の夜6時~8時半まで、なんと無料で観戦できるムエタイの試合が行われているのです。
その名も、「Bangkok Fight Night@MBK」。スタジアム以外にバンコクで本格的なムエタイの試合が観戦できるのは、ココだけです。
ここ“MBKファイト”では、対戦選手同士をウエイトでしか合わせないそう。つまり、初参戦の若者が、同じ体重のベテランチャンピオンにぶつかる可能性もあり、まさに一か八かの命がけ。吉嶺さんは、「ここではやりたくない」とその組み合わせ方が無謀であることを教えてくれました。
■表情が判定に影響する?
観戦に際し、吉嶺さんに、ムエタイ観戦において“おさえておくと3倍楽しめるポイント”を教わりました。
【ルール】
ムエタイは、両方のひじ・ひざ・手・脚の8カ所を使って攻撃できます。勝敗はKOかポイント加点形式で争われ、蹴られるとマイナスポイントですが、足でガードするのはセーフ。しかし、蹴りを手でガードすると、手に蹴りが入ったとみなされてしまうとのこと。さらには、パンチはポイントにはならない、というから驚きです。
【表情】
苦しそうな表情は、マイナス判定につながるそう。パンチを受けても蹴りが入っても、痛そうな顔はしません。観ているこちらの顔は歪みまくります。
【リングネーム】
選手は、外国人以外は本名ではなくリングネームを使います。今回観戦した選手には、「ペットサイアム」=サイアムのダイヤ、「ペッタニー」=街の宝石、など、宝石の名前が付いていました。パンチが強い選手には、そのようなリングネームが多いとのことです。
■ムエタイ選手はなぜ、ムエタイを始めるのか?
国技であるムエタイですが、タイ人は一般的に、幼い頃ムエタイの選手に憧れたりはしないと言います。貧しいが故に、衣食住が確保され、さらに(朝晩の練習以外)日中に学校に通うことのできるジムに子供を預ける。そんな「口減らし」のために預けられた子供が、師匠のもと練習をかさね強くなっていくのです。
タイは階級社会でもあり、富裕層の子供がやるのは、空手やテコンドーなどのよう。最下層の子供と同じ環境には置きたがらない…。つまり、どちらも親の都合ということですね。ムエタイ選手はもともと、競馬なら馬、闘鶏なら鳥と同じ、賭けの対象だったようです。
そんなムエタイも、時代の変遷とともに、「土曜日夜7時からのムエタイ番組放映」や「女性選手のアイドル化」など、クリーンなイメージ戦略を打ちだしています。
あくまで、ショッピングの帰りに気軽に楽しめる刺激的な場所! タイ旅行中の水曜日にはぜひ、“MBKファイト”へどうぞ!
(写真/Yosuke Hasegawa、文/しらべぇ海外支部・hiroko)
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