【vs税務署】個人事業主(フリーランス)が顧客開拓に使った費用が経費にならない?!
2015/01/24 08:00
「法人ではない個人の司法書士が顧客開拓のために使った費用(ロータリークラブの会費)が、必要経費として認められない」……いったいなぜ?
今回はフリーランスにとって死活問題でもある「必要経費」について、税務訴訟のプロである税理士松嶋洋さんに士業の必要経費について解説をお願いしました。
さて、あなたの経費、申請は通るでしょうか? ぜひ参考にして下さい!
1.なぜ「業務に必要な活動が、経費と認められない」?
では、さっそく冒頭の問題について、詳しく聞いてみました!
「この司法書士は、ロータリークラブの活動を通じて顧客を開拓していましたので、当然に必要経費になると主張したのですが、その主張はすべて排除されています」
ふむふむ。顧客を得るための活動にかかった費用なのだから、このケースは企業であれば、結果的に見て「必要経費」であったと判断できそうです。
しかし、なぜ個人の場合はそうならないのでしょうか?
「法人ではない個人については、事業に『直接必要』と認められるものだけが必要経費となる、という通説があります。先の会費は、確かに『顧客を獲得する』という営業上の必要性から支出したものと思われますが、司法書士の仕事は登記等の手続きであるところ、司法書士の業務に直接必要とは言えない、と判断されたのです」
2.法的には許されるものなの?
「業務に直接必要とは言えないから」却下されてしまうとは、厳しい判断だなと思わずにはいられません……でも、これはあくまでも「通説」によるものですよね?
法律ではどうなっているのでしょうか?
「必要経費に関する法律を読んでみると、単に、事業に『必要』な費用であれば、必要経費になる、と書かれているのです」
えっ? それなら、やはりロータリークラブの会費は「必要経費」として認められそうですが……「法律」と「通説」で内容が異なるはなぜ?
「なぜこのような不一致が生ずるかと言えば、個人事業主の記帳状況が法人に比して非常によくないからです。記帳状況がよくないということは、税務調査で後日申告を確認する際、必要経費の判断が適正になされたのか、税務署が検証することが難しいということを意味します。このような事情があるため、敢えて個人の必要経費は事業に『直接必要』な費用に限定されるとして、経費を制限的に考えているのです」
3.裁判所は税務署の言いなり?
「通説」と「法律」では、上記のような意見の差異が存在する訳ですね。それでは、必ずしも税務署の判断が正しいとは言えない気もします。
裁判所はどう判断するのでしょうか?
「困ったことに、裁判所もあまり税の法律には詳しくありませんから、税務署が主張する内容をそのまま認めることが多くあります」
そんな! では、税務署の判断が、ほぼ結論ということになります……。
「裁判所のお墨付きがあれば、法律があるにせよ、その判断を優先させる実務も多々行われています。このため、個人事業主の所得税の申告に関しては、その必要経費の範囲は事業に『直接必要』な費用だけ、と考えておいた方がいいのかもしれません」
つまり、今回のケースは、「司法書士の業務とロータリークラブの会費は直接必要と判断することが難しいので、税務署が排除した」ということ。
要するに、「ピンとこない理由はダメ」……?
顧客開拓はフリーランスの大事な使命! しかし、それにかかる費用が経費と認められないというのは、なかなか厳しい話です……!
「必要経費は税務署を納得させる形で」というのも、個人事業主に必要なスキルなのかもしれませんね。
(文・取材/しらべぇ編集部・法律相談広場)