【たかまつななのお笑いジャーナリズム論】選挙を前に『憲法九条を世界遺産に』を読む
2014/12/10 17:00
しらべぇ読者のみなさま、ごきげんよう。お笑いジャーナリストのたかまつななです。
「さんまさん…?」どうして、お魚に「さん」をつけるのかしら?
世間から乖離された生活を送っていた中学生の私は、大御所のお笑い芸人さえも知らなかったのです。小学校の頃は中学受験のために、塾に通いテレビを見る習慣がつかなかった私にとって、お笑いと言えば、落語や狂言と言う伝統芸能として捉えられていたのです。
その後、フェリス女学院という閉ざされた環境ですくすくと典型的なお嬢様に育ちました。
■お笑いとの出会いは「憲法九条」
そんな、お笑いとは無縁のお嬢様である私が何故、芸人になったのか。それは、ある本との出会いです。中学2年生の時に『憲法九条を世界遺産に』という本を手に取りました。それは、哲学者の中沢新一さんと太田光さんとの対談本でした。
憲法九条は守るべきか、改憲すべきか意見が分かれます。改憲すべきだと言う人は、日本が敗戦した時に、GHQと一緒に作ったものであるから、純粋な日本国民の手によって作られたものではないと主張されます。
また、北朝鮮の核開発やミサイル発射など隣国の脅威にさらされ、変化する国際情勢の中、憲法九条は変えなければならないという意見もあります。
憲法九条は絶対に守るべきだという考えの人の多くは戦争を再び起こさないため、日本が同じ過ちを繰り返さないために必要だと述べます。
■今年の流行語にもなった「集団的自衛権」
このような対極する意見がある中、安倍首相は、憲法九条の拡大解釈を行いました。憲法を変えることなく、捉え方を広げることにより、その内容を変えたのです。つまり、今年の流行語大賞にもなった「集団的自衛権」を認めるということ。
日本は、立憲主義の国家です。立憲主義とは、権力者の考えではなく、憲法によって、国を統治するという考えのことです。憲法を変えずに、解釈だけを変えるなんて、立憲主義の国ではないという批判もあります。
これらの複雑な背景がある中、私はこの本と出会ったのです。中沢さんは、この本の中で、憲法九条は修道院と似ていると述べています。修道院というのは、無茶なことをしており、地上にそのような場所があることを人々に知らせていることに意義があるとおっしゃっています。
太田さんは、加えて「憲法九条は、たった一つ日本に残された夢であり理想であり、拠り所なんですよね。どんなに非難されようと、一貫として他国と戦わない。二度と戦争を起こさないという姿勢を貫き通してきたことに、日本人の誇りはあると思うんです。他国からは、弱気、弱腰とか批判されるけど、その嘲笑される部分にこそ誇りを感じていいと思います」
憲法九条は破綻しているが、だからこそ世界に希望を与え、心を清らかにさせられる象徴なのではないかというのです。私は、これを読み「ユニークな政策を提言される学者さんがいる」と感動しました。
しかし、巻末を見ると、お笑いコンビ「爆笑問題」と書いてあるのを目にしました。そこで、私は「芸人さんだから、ユニークな発想があったのか!」と、憲法九条に新しい視座を与えられたのに驚きました。お笑い芸人さんとは、素晴らしいご職業だと感銘し、私は芸人になるのを決意致しました。
■衆院選は、考えて行動するタイミング
正直、憲法九条を守っても、改憲しても、拡大解釈をしてもメリット・デメリットはあります。だからこそ、どれが最善の選択か、私たちは思考しなければなりません。『憲法九条を世界遺産に』を読んで、もう一度憲法とどう向き合うのか、安倍首相の選択は正しいのか、考えませんか?
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(文/お笑いジャーナリスト・たかまつなな)
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