子供が本を読むようになるには(前編)【溜池ゴロー、子育てこそ男の生き甲斐】

溜池ゴロー監督による子育てコラム連載です。

しらべぇ_溜池ゴロー_子育て

子供を持つ友人から「どうすれば本を読む子供になるのか」または「うちの子がなかなか本を読まないんだけど、どうすれば…」と質問をされることが何度かあった。自分の子供が読書好きになるかどうかというのは、世間の親にとれば意外と大事な問題らしい。

確かに、ワシの周囲にいる大人たちを見ても、日常的に本を読む人間と、まったく読まない人間とでは、「論理的思考」や「考える深さの度合い」や「情報収集能力」に大きな違いがあると思われる。

ほとんどの親は、自分の子供が、世間話の延長のような単純な情報だけで浅はかな考えをする人間になって欲しくないだろうし、できれば論理で物事をしっかり考える頭の良い人間になって欲しいと思っていることだろう。だから、親にとって子供が「読書好き」、すくなくとも「本を読むことが苦痛ではない」人間になるかどうかは大事な問題なのだ。

なぜ、友人たちがワシにそういった質問をしてくるかというと、ワシの息子が年齢の割には本をやたらと多く読んでいるからだ。ちなみにワシの息子は現在10歳、つまり小学校4年生だが、息子が読み終えた本を記録しているノートを覗いてみると、この半年で50冊ほど、ページ数は2万ページを超えている。

並んでいる作家名を記すと……横溝正史、沢木耕太郎、森村誠一、東野圭吾、宮部みゆき、森博嗣、伊坂幸太郎、川村元気……などである。見ればお分かりの通り、普通大人が読むような作家ばかりのものを次々と読破している。

今回は、なぜワシの息子が読書好きになったかを分析しながら、「子供が本を好きになるための方法」を考察しようと思っている。もちろん、ワシのこれから述べることが読者全員の参考になるかどうかわからんが、興味のある方はどうぞ読んでくだされ。

まず、ワシら夫婦のつくった家庭環境や行ったことで、息子の読書好きと大きく関係ありそうな事柄を挙げてみよう。

① テレビが家にない。
② オモチャやゲームをほとんど買わなかったが、絵本、本、漫画、図鑑、写真集などは、どんどん買って、部屋中にばらまいていた。
③ 時間があれば読み聞かせをしていた。
④ ワシら夫婦(とくに妻)が読書好きである。

多分これらの要素が、息子を本好きにした大きな理由だと思われる。こう並べて書いてみると、大したことではない。誰でもというかどの家庭でも、やろうと思えばやれることだ。

中には、「本をそんなに買うほどお金に余裕がないからできない」とか、「忙しくて時間がないからできない」とか思われた方もいらっしゃるかも知れん。しかし、そこはお金と時間の工夫次第でなんとかなるはずだし、それを考える労力こそが親から子供への愛情だとワシは思っている。

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①テレビが家にない

前回お話した通り、息子は生まれてからずっとテレビのない生活の中で育ってきた。つまり、娯楽としてのテレビ受像機がない状態にいる。しかし、子供といえども生活の中で娯楽を見つけようとするのは当然である。なので、ワシの息子が生活空間の中でテレビ以外の楽しみを見つけ出すのは自然な流れだったと言えるだろう。

息子にとっては、テレビのリモコンスイッチを入れる代わりに、その辺にある絵本や写真集を開いたり、本棚から子供用だろうと大人用だろうと手当たり次第に興味のわく本を引っ張りだしたり、クラシックやロックなどのジャンル関係なく棚に並んでいる音楽CDをかけて聴くことなどが、当たり前の習慣となっていった。

だから息子は保育園時代から、クイーンイエスストーンズキングクリムゾンピンクフロイドボブマーリーザ・フーレッドツェッペリンラルクアンシェルも聴いている。そのことが後の息子の性格にどう影響したかはまだわからん。

よく海外の学者の中には「情緒不安定になるから子供にロックを聴かせてはいけない」とおっしゃる方もいるが、今のところ息子にそのような傾向は見えてはいない。まあ一応、メタリカ(ヘビメタの大御所バンド)は、小学校2年生以降まで聴かせはしなかったが…(笑)

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②絵本、本、漫画、図鑑、写真集などを部屋中にばらまいていた

このような状況だったので、ワシら夫婦は、絵本、本、図鑑、写真集、漫画などは惜しみなく買い、部屋中にばらまいておいた。後は、息子が勝手に本や図鑑を開いて、勝手に楽しんでいるというわけだ。子供向けだろうが、大人が読むものだろうが、良いと思われるものは年齢のレベルや難しさに関係なく与えた。

大人たちの中には、「子供にはまだ難しすぎる」とか「子供だから子供用の本を与えればいい」と述べる方もいらっしゃるだろう。しかし、ワシは逆に質問したい。「難しいって、誰が決めるのだ?」「子供は子供用の本を読むなどと誰が決めた?」「自分のリサーチや研究でそういう結論を出しているのか?」と。

「子供にはまだ難しすぎる」「子供用の本を与えた方がいい」という大人たちの常識は、大人達の間違った常識は、子育てに関して考えるのが面倒くさい大人が言い訳として使っているだけだとワシは感じる。どこかの知らない誰かが決めた常識に惑わされる必要などはない!読みたいかどうかを決めるのは、その本を読む子供だ。難しいかどうか決めるのも、大人が読むものとされている本を読むと決めるのも、子供自身である。

たとえ、親が難しいと思った本でも、ひょっとしたら面白がって読むかも知れん。親が勝手に子供の能力の限界を決めるべきでないし、伸びようとする芽を摘み取るようなことをするべきではない。子供には、選択肢が多ければ多いほど良い。その選択肢を見せてやるのが親の仕事だとワシは確信している。

ただし、子供に与えてはイケないものも当然ある。エロ描写と暴力描写だ。ワシは学者ではないので、学術的に説明はできないが、脳科学に関してのある本を読むと、「人間の脳にある前頭前野は18歳までにほぼ完成される」と書かれてあった。ということは、人間の前頭前野は18歳までは成長し続けるということだ。

脳が成長している過程においては、当然あからさまなエロ描写と暴力描写はマイナスだろうと予想される。エロ描写、暴力描写などの刺激は、18歳以降の前頭前野がほぼ完成し、常識的な判断ができるようになってから、見る許可を出すべきだとワシは思っておる。なのでAVが「18禁」=「18歳まで見ることができない」というのは、前頭前野の発達といった側面から見ても間違ってはいないと思う。

ワシの職業はAV監督。「大人の皆様」に「大人のためのエロ」を作っております。AVなどの露骨なエロ描写のあるものや暴力描写のあるものは、決して子供には(前頭前野がほぼ完成して常識的な判断ができるようになるまでは)見せてはいけないのは当然である。

話が脇道にそれたが……ワシら夫婦は、上記のことを踏まえた上で、息子が欲しい本や漫画も、ワシらが良いと思った本や写真集も与え続けてきた。そして、息子は自然に本を開く。そんな習慣がつけば、やがては自分で本を読むようになっていくのは目に見えている。

途中で書いたことだが、もしかしたら読者の方々の中には「本をたくさん買うほどお金に余裕がない」と思っている方もいるかもしれん。それに関しては、本というのは古本屋でも買えるし、図書館で一週間借りることもできる。なんとでもなるはずだ。

何度も言うが、ワシの家にはテレビも車もゲームもない。おまけにワシには髪の毛もない……その代わりに子供の読んできた本はたくさんあるし、これからも本に関して金を惜しむつもりはない。

極端なことを言わせてもらえば、テレビもゲームも買う必要があるかどうか考えた方がいいのではないだろうか。それより本を買った方がいいのでは?と頭の中でシミュレーションしてみることも選択肢の一つとしてお薦めする。

ということで、続きは次回!

(文/溜池ゴロー

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Sirabee編集部

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