【松澤千晶のアニメめくるめく世界】「計画通り。」愛すべきゲスキャラたち
2014/10/29 17:00
こんにちは、フリーアナウンサーの松澤千晶です。私はアニメを見ることが大好きなのですが、何故好きなのかというと、やはり魅力的なキャラクターで溢れている世界だからだと思います。過酷な運命に立ち向かう主人公、ミステリアスなヒロイン、クールなライバル…物語はいつもキャラクターが紡ぎ出すものです。
そのような中で、ごくたまに、物語の中では悪役なのに何だか憎めない、不思議なキャラクターに出会うことがありませんか? 卑怯であったり、姑息であったり…実際に自分が関わりたいとは思えないけれど、何だか嫌いになれない下衆なキャラクター、そう「ゲスキャラ」です。
この「ゲスキャラ」の存在は、ストーリーが進むにつれて味わい深くなるもので、作品にとってはこの上ない良い調味料であると言っても過言ではありません。今回は、そんな「ゲスキャラ」の魅力について考えてみたいと思います。
■ゲスケース1
【ムスカ=ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ】(天空の城ラピュタ)
「見ろ!人がゴミのようだ!!」
まずはスタジオジブリの名作より、みんな大好きムスカ大佐です。
彼はラピュタ王となって世界を支配しようと、嫌がるシータを我がものにしようとしたり、3分間しか待ってくれなかったり…欲望の赴くままに行動するゲスの代名詞のような存在ですが、よくよく考えてみるとラピュタ王家の末裔である彼ですから、その力を手にすることが当たり前の使命だと感じていたのかもしれません。
作中では嫌われ者ですが、視聴者である私達には大人気ですし、彼がいなければ「天空の城ラピュタ」という物語は成り立たなかったでしょう。
ゲスというか、最後はクズのように散ってしまいましたけれど、ね。
■ゲスケース2
【夜神月】(DEATH NOTE)
「計画通り。」
こちらは言わずと知れた大人気作品「DEATH NOTE」の主人公・夜神月が、自身の目論みを成功させた時に、狂気に満ちた微笑みと共に発した台詞です。
名前を書かれた人間が死ぬというデスノートを使って自ら犯罪者を裁き、新世界の神になろうと奮闘する彼ですが、次第に自分にとって邪魔な者を抹殺するようになり、最後は自らが殺人鬼のようになって裁かれてしまいます。
少年漫画の主人公とは思えない非道な行いを繰り返し、もはや顔芸ではないかと思われる下劣な表情の数々を披露しますが、全ては彼の「純粋な正義感」の暴走なのです。より良い世界を築きたかった…ただそれだけなのですから、少し切なくなってしまいます。
それでも、ゲスである事には変わりありませんけれど、ね。
■ゲスケース3
【ギニアス・サハリン】(機動戦士ガンダム第08MS小隊)
「愛など粘膜の作り出す幻想に過ぎん!」
個人的に口にしてみたい台詞No.1で、これを紹介したかっただけかもしれません。
こちらはガンダムの人気作品から、物語のヒロインであるアイナ・サハリンの兄、ギニアス・サハリンが、愛し合う主人公とヒロイン(妹)に吐き捨てた台詞です。病に冒され、自身の計画を成功させることだけが生きる糧となっていた彼ですが、これまで支え合ってきた妹に裏切られたと感じ、こんな言葉を投げかけます。
この「粘膜の作り出す幻想」という単語に全ての憎悪が込められていて、最愛の母に捨てられたとされる彼の嘆きが伝わってきます。それにしても粘膜って…よほどショックだったのでしょう。
残念ながら、彼も紛れもないゲスですけれど、ね。
■全ては純粋さ故の過ちです。
いかがでしたでしょうか。こうして見てみると、ゲスなキャラクターと言えど、「悪役ならではの正義」が感じられ、そこに魅力があるように思えます。そして彼らに共通するのは、根が純粋だということ…純粋なものほど濁りやすいものですから。
もし、あなたの周りにもこのような方々がいたら、そっと道を正してあげましょう。本来は純粋な心の持ち主なはずですから、少し道を間違えているだけかもしれません。
ゲスなキャラクターは他にも、ジョジョの奇妙な冒険・第三部のイギーをはじめ、ペルソナ4の足立透や、selectorシリーズの蒼井晶など、こちらでは紹介し切れないほどたくさんいます。
しかしながら、こうしたキャラクターは世の理不尽さを代弁してくれている存在だと思いますから、彼ら、彼女らがいつかきちんと報われることを願って、私は今日もアニメを見ようと思います。
(文/フリーアナウンサー・松澤千晶)
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